「さっきも言った通り、自分の所属モデルの教育も出来てないような所とはやり取りしないわ。今日限りでピンキーエージェンシーとの契約は解除致します。追って担当弁護士から通達致しますので」

そう言うと事務所のドアを開けて

「お帰りください。御用はお済みのはずですわ」

にっこりと冷たい頬笑みを浮かべて言うあっちゃん。

ガックリと項垂れた社長と何が起きたのか最後まで分かっていないらしいモデルの葵さんは、そのまま社長に連れられて帰っていった。


どうなるやらと思った嵐のようなモデルの到来は、あっちゃんがあっという間に片付けてしまった。


その姿は凛としててかっこよかった。


確かに綺麗さでも、仕事面でも問題起こした葵さんではあっちゃんに勝てはしなかった。


初めから勝負にもなってなかった。
おなじ土俵に居ないのだから、そもそも勝負にならないのだ。


大人が子どもを簡単にあしらった。
大きな傷をつけてと言ったところだろうか…。


とりあえず問題が一つ片付いたのは良かったと思う。



「智子さん、お疲れ様です。私が離席したうちにこんな事になって大丈夫でしたか?」

そう尋ねると

「大したことないわよ!これくらいたまに勘違いした子達が来るからねぇ。ほらうちの社長綺麗だから女に目覚めさせてあげるだとか、逆に男子モデルが枕営業仕掛けに来たりとか。なかなか面白いわよ?」

それを面白いと言いきれる智子さんが、凄いと思うのは私だけでしょうか?


もしかしたら影で一番強いのは智子さんかもしれないと感じた私の考えは顔に出ていたらしくイチさんに、

「なっちゃんがたどり着いた答えは間違いではないわよ」

とお墨付きをもらった。
うちで一番怒らせちゃならないのは、古株で事務所に詰めてる智子さんと分かったのも今回、私にはいい勉強になったと思います。