私の顔色が一気に悪くなるのを見てオネェさんは不味いこと言ったのかと、少し慌てつつこちらを見ている。


「何かつついちゃいけない所、言っちゃったみたいね。」


気まずそうなオネェさんに



「いえ・・・。私、その孤児なので帰るところはありません。とりあえず荷物は引っ越し業者の倉庫に預けてマンスリーとか借りてみようと思います。仕事もとりあえずバイト3箇所位すれば生活は出来そうだし。今までも似たり寄ったりだったし・・・」


そう慌てて私も貼り付けたような笑顔で答える。



そんな私を見てオネェさんは、とても痛そうな顔をした。




「ねぇ、あなた。私の所で仕事しない?今猫の手も借りたいくらい忙しいのよ。住むところも確保してあげるからついてらっしゃい!」


そう優しい声で言われて、俯きかけてた私はバッと顔を上げる。



「私の名前は島田明、オネェの時はアカリちゃんよ!とりあえず業者さん、この住所に荷物送ってちょうだいな!ここは借り手がついてて明後日には入居なのよ!」



そう業者さんに伝えられ、私が返事するより早く引っ越し作業が再スタートされると、あっという間に部屋が空になる。



「名前、なんて言うの?」


あまりの流れにポカンとし過ぎた。

我に返った私は


「三郷夏美です。」


いきなり仕事と住む所をなんて…、話がうますぎる。
この不思議なオネェさんについて行っていいのか警戒感が滲む。
すると、オネェな美形は言い出した。



「ふふ、その雰囲気。懐かない野良猫みたいね。ホントに私の仕事、今人手足りないのよ。事務兼雑用係って感じで頼みたいの。こういう小さな会社よ。」


そう言って渡された名刺にはトータルプロデュース、オフィスアカリ。代表 島田明 源氏名アカリ
と記されていた。