リビングに行くとソファーの前のローテーブルにメイク道具がぎっしり並んでて、その小脇にはコテがスタンバイしている。


「さ、お仕事用の準備するわよ!うちの子舐められたら困るからね」

そうあっちゃんが言うと、

「そりゃ、当たり前よ!うちの子舐めてもらっちゃ困るわ。うちの子はいい子なのよ。勝てない位に仕上げとかなくちゃ!」

そうさっちゃんが気合いを入れている。


「何かあるの?」

つい、そう聞くと


「初出勤でしょーが!モデルとかもうちの事務所には来たりすんのよ。私たちは夏美が舐められるなんて嫌だから全力でやるわ!」


どうやらなかなかのお姉様達がいらっしゃると。
そんな方々に舐められたら困るから、の二人がかりの武装なのね。


「うん、何となく分かったから。よろしくお願いします」

「任せなさい!」

そんな掛け声で昨日のお出掛けと同じ位に綺麗にメイクと髪型を施されて、更には淡い色だけど形も整えてネイルまでしてくれた。


紺のワンピースと相まって上品な感じに仕上がっている。


ちょっと変身気分で嬉しいけどこらから初仕事だ。
気合い入れなきゃ!


「さっちゃん、あっちゃん。ありがとう。私、頑張るからね!」

そう拳握って気合いを入れていると、


「ほんと、うちのなっちゃん可愛い!」


と撫でてくれるさっちゃん。


「夏美、しっかり智子さんに付いて仕事教わりなさい」

そうあっちゃんに言われて


「はい!しっかり学んで智子さんが安心して娘さんの産後のフォローに入れる様にするね!」

「頼んだわよ!」


優しく微笑んでポンポンとしてくれたあっちゃんに、何故かドキッとした。

でもそれは一瞬だったので胸元を押さえたものの、私はそれをスルーしたのだった。