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ご飯を食べながらアカリは夏美をよく見ていた。


自分が大家のアパートから連れてきた可愛い女の子。

引越し作業のストップした状況を不審に思い、確認しに行けばそこに居た夏美はこの世の終わりみたいに蒼白な顔をしていた。

悲壮感漂うその様子に思わず少し場の空気を変えるべくオネェ全開でその場に突入した。


聞いてみれば入社予定だった会社が経営破綻。
倒産して人事にも連絡がつかないという。
新卒社会人に降りかかった災難と言えるだろう。

若い身空で可哀想だが、若いからこそ再出発は容易いし親元に戻ればいいと安易に言えばさらに顔色が悪くなり、自分は孤児で帰る場所は無いと言うのだ。
しまったと思いながら再び観察すれば、夏美は原石みたいな子だった。
まだいじってないけどこれは体型も顔もモデル張りである。
磨けば光るのは仕事柄よく分かった。


この子なら濃いキャラの多い自分の会社の事務兼雑用スタッフとしてやって行けるのではないか?


身寄りもないと言うのだし、仕事を与えて落ち着くまでうちの一部屋貸せばいい。


思い立ったら即行動の精神ですぐに提案。


案の定不審に思った夏美に物凄く警戒される。
名刺を渡し会社の社長である事などを説明し、話を進めてサクッと引越し業者をも使い流していった。


自宅に連れ帰るとそこに居た同居人で同じく美容師でカリスマヘアメイクアーティストでもあるサチコと会わせる。


サチコは見た事があるらしく、驚きつつもお互いに波長が合うのかすんなりこの状況というか人に慣れた。

夏美はオネェに偏見が無かった。
それも連れ帰る理由になった。
この業界オネェは多い。
偏見が無いのはオネェにはウケがいい。
仕事柄そこは必須の項目だった。