そうして、たいした時間も掛からずに声が掛かる。


「出来たわ!夏美ちゃん目を開けてみなさいな。」


そう楽しそうなアカリさんの声に目を開けて、目の前の鏡に写る私をみて私自身が目も口もポカンである。
目の前には見た事ない自分自身。
整えられた眉に、綺麗にぬられたプルプルの唇に目元は可愛らしい春色のピンクに目尻に淡いブラウンがのせられて少し引き締められた印象。
少し幼かった私がメイクをされてしっかり大人になっている。


「自分じゃないみたい・・・」


思わず口から零れるように呟くと、


「これが夏美ちゃんよ!夏美ちゃんの持ってるものを引き出したに過ぎないわ!!」


またもオネェのダブルサウンドにガツンと言われて


「サチコさん、アカリさん!ありがとうございます」


そう微笑んで言うと


「あーん、もうこんなに可愛い子がうちの子なのよ!!よし!これから自慢して歩くわよ!!」


私をぎゅーと抱きしめながら叫ぶサチコさんに、


「ちょっとサチ、あんただけでなく私も行くんだからね!夏美ちゃん、お楽しみはこれからよ!みんなでお買い物行きましょ!」


バチンっとウィンクしながら言うアカリさんは、妖艶が剥がれて可愛く親しみやすい雰囲気になる。


「お買い物ですか?何を買いに行くんですか?」


思わずコテンと首を傾げて聞くと、


「明日からウチで働いてもらうけど、持ってるのこれ以外だとリクルートスーツとデニムとTシャツとかじゃない?」


え?何で?
服は片付ける時あまり見せないようにしてたのに、なんで知ってるの?!!
驚きで何も言えない私に、二人は各々に喋り出す。


「お仕事用の可愛い服買いに行くわよ!綺麗めから可愛いまでオフィスカジュアルにお出掛け用の私服まで網羅してあげるわ!」


服のコーディネートに張り切るアカリさんに、


「アカリ!あたしにも楽しみ分けなさいよね!娘の着せ替えっていう夢が叶う、こんな素敵な機会をあたしは逃すつもりなくってよ!!!」


ビックリする発言したサチコさんに、アカリさんもノリノリで答えている。


「当たり前じゃない!こんな楽しいこと、二人がかりだからより一層楽しいんじゃないの!」


こうして、私は大柄、妖艶美人オネェ二人に買い物という名の着せ替えごっこに連行されることになった。

拒否権?
あるはずが無い。
未熟者の私には暴走するオネェ二人を止める術なんて持っていなかった。