だ、抱きたい!?
恋愛初心者の私にとって、衝撃的な言葉が降ってきた。
つまりは、キス以上の、その…そういうこと!?
「えっ、ど、えぇ~、っと!?」
動揺しまくりで、上手く言葉が出てこない。
「全くお前は。少し落ち着け。菜緒の気持ちが固まるまで俺は待つから」
慌てふためく私の背中を、大きな手で優しくゆっくり擦ってくれる。
ただ、それだけで、私の心は落ち着いてくる。
「孝太郎さん…」
「そんなトロンとした顔をするな。全くお前は。絶対他の男にそんな顔見せるなよ」
孝太郎さんは大きなため息をついて立ち上がった。
トロンとした顔ってなに?
至って普通の顔だと思うんだけどなぁ。
間抜けな顔だの、情けない顔だの、散々言われたあげく、トロンとした顔はするなと言われ、しかも他の男の人には見せてはいけないらしい。
「風呂入るか」
時計を見れば、午後10時になろうとしていた。
「じゃあ、私は帰ります」
お暇しようと立ち上がり、バッグを掴もうとしたところで、孝太郎さんにバッグを奪われた。

