課長は私を見て、一瞬フッと笑った。

「名前呼んだだけでそんな赤くなるなよ。全く可愛いな」

甘い…。

甘すぎる…。

軽く眩暈をおこしそうになる。

「だ、だ、大丈夫ですっ!」

なにが大丈夫なんだか自分でもわかっていないけど、とにかくなにか言わないと、と焦って言ってしまった。

「少し早いけど行くか」

慌てている私とは正反対に、課長は冷静に伝票を持って立ち上がり、私の手を取って颯爽と会計に向かった。

手を繋いだまま向かった先は杉菜。

そういえばと、園子のことを思い出した。

個室に案内されて中に入ると、園子たちはまだ来ていなかった。

こういう場合、並んで座ったほうがいいのかな?

なんて考えていると、課長は有無を言わせず自分の隣に私を座らせた。

課長が隣に座っている。

ただそのことに緊張感が半端ない。

なにか喋ったほうがいいのかな?

飲み物とか頼んだほうがいいのかな?

ぐるぐると考えてみても、全く名案が浮かばない。

その時、カチコチに固まっている私をやわらげるように、逞しくて大きな身体でフワッと包み込むように、私は課長に抱きしめられた。