両手が塞がっている私は、孝太郎さんを抱き締め返すことが出来ない。
「孝太郎さん、とりあえず部屋に行きませんか?」
実は手の痛みがそろそろ限界に近かった。
スーパーの袋3つはさすがに重たい。
「その荷物、寄越せ」
「じゃあ、1つお願いします」
スーパーの袋1つを渡そうとすると、3つ全て奪われた。
「菜緒、手が赤くなってるぞ」
確かにその通り、両手は赤くなっている。
「でも、孝太郎さんも荷物が…」
「ほら、さっさと乗れ」
ちょうどエレベーターが到着し、乗り込んでボタンを押すとノンストップで上昇していった。
私は玄関を開けて、両手にたくさんの荷物を持った孝太郎さんが中に入ると、鍵を閉めた。
私も中に入ろうと振り向くと、孝太郎さんに強く抱き締められた。
ここは玄関でふたりとも靴を履いたまま。
それでも、耳元で甘く名前を囁かれて更に強く抱き締められると、私も孝太郎さんの背中に手を回し、抱き締め返した。

