忙しいながらも定時で仕事を終わらせて、スーパーで食材を買い込んで孝太郎さんのマンションに向かった。
渡されていた合鍵でエントランスに入ると、カウンターに立つコンシェルジュの榊さんは笑顔で挨拶してくれる。
「真宮様、お帰りなさいませ」
「こ、こんばんは」
マンションに来るのは久しぶりなのに、私の顔も名前も覚えてくれていた。
しかも、『お帰りなさいませ』と言われて、くすぐったくて仕方ない。
「お荷物、お運びいたしましょうか?」
榊さんは私が両手に持っているスーパーの袋を凝視している。
ちょっと、というよりたくさん買い込んでしまったかも。
「大丈夫です。それじゃ失礼します」
さすがに少し手が痛かったけど、もう少しで孝太郎さんの部屋に着く。
ぺこりとお辞儀してエレベーターが来るのを待っていると、「菜緒!」と後ろから名前を呼ばれた。
会社でもなかなか会えなくて、会話も儘ならなかった。
ずっとずっと会いたかった人。
今日ようやくプライベートで会える私の愛しい人。
振り返ると、孝太郎さんが足早にこちらに向かって歩いて来ていた。

