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どうしてだろう。



どうしてこんなにも、もどかしい気持ちになるんだろう。



人生なんて生まれた時の環境でその人の運命が決まっているんだ。



貧しい家庭、裕福な家庭、幸せな家庭、辛い家庭。



最初の家庭環境ですべてが決まって、あとはどうにでもなる。


だけど、俺の家庭はどの家庭環境にも属さない逸れものの家庭なのだろう。



家族であって家族じゃない。


家族だけど家族という仮面を被った仮面家族だ。



愛情など生まれない、幸せなど表れない、楽しいなど出てこない、何もなく色合わす事のない無な家庭、それが俺の家庭である。



俺には両親と妹と祖父の家族がいる。



父親には本妻がいたが母と不倫関係に陥って俺が出来てしまった、いわゆるおまけという存在が。



この町にいた頃はまだ結婚しておらず一緒に暮らすようになったのは東京の方に引っ越してからだった。



そして同時期に本妻とは俺の母親と不倫して俺が出来てしまった事が口論になり、そのまま引っ越しする事になった時に離婚し本妻の間に出来てしまった妹も育てるように父親に押し付けて一緒に東京の街へと引っ越したのだった。


じいちゃんはもといいばあちゃんを数年前に亡くして、それ以来ずっと母さんとこの町に暮らしていた。


だけど、引っ越す際にご老人の一人暮らしは大変だし心配だという事で母さんはじいちゃんも一緒に引っ越す事にした。


それは、俺が5歳の頃の事だった。



俺の記憶の中で幸せの記憶というのは、おそらくあの5歳までの母さんとじいちゃんと暮らしていた頃だと言える。



とは言っても幼少期の記憶はほとんどなく、なんとなくそう思うだけの曖昧な記憶で、ただ幸せだったという記憶があるだけである。




一緒に暮らし始めた頃の父親は俺に対してほとんど無視状態で、そんな曖昧な関係が2年程続いた。