「ごめん…」


動揺する私に先輩はそっと頭を撫でて申し訳なさそうに謝る。



「ごめん…言いたくないんだよね。無理に聞いてごめん」



「……」



「言いたくない事あるよね」



そういう彼の顔は少しだけ切ない感じだった。



この人も何か事情があったりするのだろうか?



しばらく妙な沈黙の空気が漂ってしまった。



「あー…えっと…あ、そうだ。これ、よかったら食べる?」



先輩は機嫌を良くしてもらいたいのか、飴を差し出してきた。



「はい、あーん」



「えっ…ええっ」



なぜか彼は飴を包んでいる袋を開けて、出てきた飴玉を持ち、私の口へと近付けてきた。



「ちょっ…何を?」



「飴嫌い? いちごみるくだよ」



(そういう事じゃなくて)



「す、好きですけど、あの…っ」



「そう。じゃあ、はい。あーん」



先輩は私の気持ちなど気にする事なく、また飴を口に近付けてきた。



「……っ」



仕方なく差し出された飴に口を開けると、先輩の指が口元を触れ中へと入れられた。



(指が当たった…あ、おいしい)



口の中に飴が入ると、甘いいちごみるくの味が口いっぱいに広がった。



「おいしい?」



「あ、はい」



「あはは、だよねー。いちごみるくの飴好きなんだよね。ていうか、俺甘いの全般好きなんだよねー」



「そ、そうなんですか?」



「うん♪」



すごく意外だった。



かっこいい見た目だから、てっきり甘い物とか苦手だと思っていた。



「………」



そっか、これもイメージというものなのか。



人が持つイメージって本当馬鹿げている。



つまらないな、本当に……。