キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン

「 蛍、諦めて吉村をお迎えしようか 」

「 ははははは 」

2人は諦めた様子で、ドアを見つめ、先生の登場を待ち構える。


ガラガラ


きた、吉村か!?!?


「「 あれ? 」」

2人が声を揃えて間の抜けた声を出すのも無理はない、なんせ、入ってきたのは吉村ではなく、顔も知らない名前も知らない男の先生だったからだ。



この通り座ってくださいと、黒板にはられた座席表通りの席に着き、愛奈だけでなく他の皆も先生を興味津々に見る。


「 えっと、とりあえず自己紹介からかな? 」

あれ?イントネーション…


愛奈が違和感を覚えたのはここら辺は大阪に近く、基本関西弁だが、この先生は標準だ。だけど少しなまりも感じられる喋りだ。



カツカツ

皆から注目を浴びる先生は左利きなのか左手でチョークを持ち軽快な音を立て、「 本田聖詞 」と、書いた。


ホンダ……なんて読むんだ?


「 ホンダサトシといいます。実は岐阜県からこちらの方へきたからここはへんとはイントネーションが違うと思うけど…… 」


本田先生は自分のことをたくさん話していた、結婚はしていて愛する奥さんがいるとか、本田は奥さんの方の苗字だとか、いろいろ。



けど、愛奈よ耳には全く本田先生の話は入っていなかった。
頭の中は翔のことでいっぱいだ。



早く会えないかなあ〜

同じ授業ないのかな?



先生の話もっと聞いとけばよかった、って愛奈が後悔するのは数ヵ月後になるであろう。