「 同じクラスになれたら、関わるくらいはできるかな… 」

「 そりゃ、あるやろ!だって体育祭に文化祭ってみんなで協力する行事があるんやし 」

「 そやんね! 」

「 でも、まさか愛奈が一目惚れとはねえ〜 」

萌衣奈は愛菜の二の腕あたりを肘でつつき、ニヤリと口角を上げ弄り始める。

それに対し愛奈は、表情を変えず「 うるさい 」と一言を言い、次々と景色を変える窓の方を見つめ、あの日のことを思い出した。

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春休みに差しかかるちょっと前の日のこと。



愛奈は同中の部活の後輩で今も同じ高校の後輩でもある百華(モモカ)に、腕を引かれてとある場所へと連れていかれた。

パコーンパコーン



「 どこ連れていかれるんかと思ったらテニスコート?? 」

「 あれ! 」

愛奈の言葉は完全無視で、百華は1点を見つめ、そして1点を指さした。
その眼差しと指につられ、そちらを見てもどれを指しているのか分からず首を傾ける。

「 あの、緑の服着た、あ!今ボール打ったやつ! 」

と、説明をされ完璧に当てはまる人を愛奈も発見しそれを見つめてみる。

それと共に、爽快なボールの打つ音にかき消されそうなくらい、小さな声で発されたのは幸せなお知らせ。

「 あれ、彼氏 」

「 へえ、彼氏かあ ……… って、え?彼氏?? 」

「 うん、そう 」

頬を赤らめて、浅く頷く百華がとても可愛く感じた。


雲一つない青空、雪がつい最近まで降ってたのが嘘みたいにお日様は辺り一面を照らし、暖かな気候。
そんな暖かな気候に釣られたのと、彼女があまりにも幸せそうに部活に励む彼を見つめていたのが微笑ましかったのか、とても温かい気持ちになった瞬間、愛奈は1点に目が止まった。


どんな球もいとも簡単に返し、誰よりも焼けた肌から際立つ白い歯を見せて笑い、誰よりもたのしそうにテニスをする男子。


「 あれ、誰? 」

「 ? 」

「 ほら!あの今百華の彼氏とラリーしてるキャップ逆に被ってる人! 」

愛奈は興奮しているのか、百華の腕を掴みグラグラと体を揺すっている。

「 ちょ、ちょ、落ち着いて! あの人、濵松翔(ハママツカケル)。愛奈と同じ学年の人やで? 」




ハママツカケル






頭の中で何回もその名前を繰り返し、「 あー、そーなん 」と気のない返事をし、また翔を見つめる愛奈。


そんな愛奈を見た百華はピンときた。


「 あー、ひとめぼれか! 」




ヒトメボレ??






また百華の発した言葉が頭の中でリピートされる。








そうか、あたし一目惚れしたんか。







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