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『美桜!!!』

『………そう………ま?』

『お前熱だって!!?馬鹿だなぁ……ほら、お前の好きなお菓子だぞ』

『馬鹿じゃないの…………病人のお見舞いがお菓子とか。フルーツとかでしょ………ふつ……う………』

『いいだろ、どうでも。好きなもん食った方が早く治る』

私と張り合うくせに、こうゆうときは無駄に優しくて、気づかってくれる。

そうゆうとこが、ウザくて………………好き。











「ん……っ…………」

なんか、懐かしい夢見てた気がするなぁ。

何だったけ?確かあれは………………。

「え?何でいるの…………」

横を見ると椅子に座った颯真がベッドによりかかって寝ていた。

机の上にはスポーツドリンクが置いてある。

颯真が買ってきてくれたのだろうか?


「あ、熱引いてる!」

近くに置いていた体温計で熱を計ると、すっかり引いていた。

「よかった…………」


「ん…………あ?起きたのか」

「うん」

颯真を起こしちゃったみたい。

「熱は?」

「下がってるみたい。気分もいい」

「それはよかった」

心配…………してくれたのかなぁ?

「ありがとう」

「べ、別に…………」

「ふっ………素直じゃないね(笑)」

あ、そっか。

あれは小学5年生の頃だ。

風邪引いちゃって寝込んでるときに、颯真がお見舞いに来てくれたんだっけ?

「お前はさ…………もう大切なやつを忘れたか?」

「え?」

「俺を好きにならせるっていっただろ?ソイツは忘れれそうか?」

あぁ、そういえば言ってたね。

「ん………………何とかね」

頭の整理もだいぶつき始めたし、思い出として懐かしいなぁって思えるようになった。

「…………そうか。俺が記憶をなくす前の大切なやつはさ、今も俺のことを思ってんのかな………」

颯真……?

スゴく悲しそうな顔。

一体どうしたんだろ?

「俺はソイツを忘れてる。向こうのソイツも諦めて前に進んでいるのだろうか………」


……………弱気だなぁ。

「前に進んでるんじゃない?知らないけど。志乃田くんだって、前に進んでる。記憶をなくしたことを認め、今と向き合ってるよ」

大丈夫………。そんなに悲しい顔しなくても、私もちゃんと前に進んでるから。

「…………そっか。何かありがとな。元気出たよ」

颯真はそう言うと、落ち着いた顔でフッと笑った。

「あ、そうだ。お前夏休みはどうすんだ?」

「実家に帰るよ?まぁ、1週間だけだけどね」

「そうか。じゃあ、その後は寮か?」

「うん」

「たくさん遊べたらいいな。学校の中ではあまり絡めてないから」

あぁ…………血祭りに合うのが怖くて、隠してるからね…………。


「遊園地とか、映画とか、普通のことをやってみようよ。普段は出来ないことを」

颯真に会ったら、普通の高校生みたいなことをしてみたかった。

夢だった。

「そうだな」