「でも幸せになるなら嬉しい」

自分よりも周りを最優先に考える親友が、その優しさのせいでどれだけ苦しんできたかを考えると、自然に笑顔になった。

「俺も嬉しいよ」

向かいから聞こえた同意の声に顔をあげると、思いがけなく強い視線とぶつかった。

「涼介?」

強過ぎる視線に変な焦燥感が煽られて、私の声には不安げな色が混ざってしまう。

「兄さんがさ、言ったんだ。これ以上迷っても後悔するだけだからって」

「ーーーそう」

視線は私に訴えているのに、涼介の口から出たのは駿介さんの話で。
まださっきの会話は続いていたんだろうか。それならば私も合わせるべきだろうか。

短い逡巡はしかし、涼介のため息で遮られた。

「違うな。話したいのはこんな事じゃない」