でも二時間後、本気で悩んだ私は、この時ばかりは素直に考えた自分を慰めてあげたくなった。



⌘ ⌘ ⌘



「こちらが紅栄堂の三橋社長です。で、こちらが今回担当させて頂く柏木とサブの市来。こっちは製作部長の」

朗らかに続けられる営業さんからのお互いの紹介。本来なら黙って聞いて、愛想笑いを浮かべて自己紹介するべきだろう。
だけど私は営業さんの言葉を途中で止めて、不機嫌な声を出した。

「ーーーミズイさん。これは一体、どういう事でしょうか?」

応接室の中、なんとか顔を出せた部長も梨花さんも営業さんも、三橋社長だって驚いた顔をしている。それが当然、誰だってこんな風に言われたら唖然とするものだ。だけど一人、私の向かいに座った男性はニヤニヤと満足げに笑みを浮かべている。