背後でシャッターを切る音がした。 「仁王立ちの、いい画が撮れました」 冬馬(とうま)君は、首から下げたカメラから手を離すと、両腕を上げて足を開いて私の格好の真似をした。 「そんなにガニ股じゃない。モデル料もらうから」 「じゃ、夕飯奢りますよ。何食べます?」 屈託なく笑う冬馬君に私は、曖昧に微笑みだけ返した。 「行きましょうか」 促されて防波堤から降りると、並んで二人で歩きだした。