質問攻めがひと段落した時、私は彼に話しかけてみることにした。

個人的に気になったのだ、理由はよく分からないけれど。

「ねぇ、亮平君、東京ってどんなとこ?」

何を話していいかわからなかった私は、彼が元々住んでいたという東京について聞いてみた。

それが一番話が広がるんじゃないかという、私なりの配慮のつもりだ。

「人がたくさんいて、苦しいくらい。」

「ん~そうかぁ…。」

私は1年生の時に行った見学旅行を思い出していた。

駅にも、街中にも、お店にも、人人人。

田舎育ちの私には、少し息苦しい場所だった。

「俺、東京嫌いだったんだ。」

「自分が住んでたところなのに…?」

「うん、駅員さんは冷たいし、人いすぎて邪魔だし、煩いし。」

意外とズバズバ物を言う子だなと思いながら、私は相槌を打つ。

「東京なんかよりも、俺は田舎っていうかなんていうか…こういう静かな場所が好き。」

「私も、一回行った事あるけど苦手、ああいう場所。」

苦笑しながら私が言うと、亮平君は意外な事を言った。

「あのさ、急で悪いんだけど、図書室の場所教えてくれない?」

「図書室?」

「うん、本読みたくて…誰に聞こうかって迷ってたんだ。」

私は立ち上がって教室の出入り口から顔を出して亮平君に言った。

「この階の一番東にあるのが図書室。借り方も教えようか?」

「うん、ありがと。」

彼は人懐っこそうな笑みを浮かべてそう言った。