「……ここで帰ったらわたし、悪者じゃない」

「あなたは優しいひとだよ。窓際族万歳だ」

「意味違くない? で、なに、窓際って」

「窓際ばっかり座ってるからさ」

「わたし?」

「他に誰がいんのよ。俺もこの店なら窓際だから、一緒だなぁと思ったんだよ」

「へぇ……」


同じ理由ならどう思うだろう。悲しく、切ないだろうか。きっと理由は似ている。訊いたこともないけれど、妙な確信はあった。


二人して眺めた窓に幾つもの水滴が筋を作っていた。ついさっきまで晴れていたはずなのに。



「折りたたみもないですって顔だね」

「だって天気予報じゃ」

「うん。俺も持ってない。でもどうせ今から食べるんだし出る頃には止むかもしれないよ」


慰めの言葉を受けながら、それはそうかもしれないけど、と思わず俯いた。


買ったばかりのパンプス。久々のガールズライクで一目惚れだったのに、雨上がりの道路にあまり期待は出来なかった。


「すぐ止めばいいのに」


彼は雨が嫌いじゃない。


穏やかな昼下がりに屋内から静かに雨音を感じるのも、きっと好きな時間の一つだ。


そういう人だとやっぱりわたしは知っていて、目の前に伝い落ちてきた水滴をにらんだ。彼の好きなものを全て好きになれたらいいのにと思うほど、お人好しにはなれなかった。


でも彼は嫌な顔一つ見せなかった。穏やかさは凶器だ。



『雨里ちゃんと話すの俺、好きだよ。虹花とは考えが全然違くて不思議で新鮮』


わたしたちは双子だ。顔が似ている以上に同じだが、性格は真っ二つだった。