その日からだんだん老いて体力がなくなっていこうとしていた身体が変わらなくなった。

 これが話に聞いていたものなのかと半信半疑のまま5年が経った。

 あれから体力の衰えは全く感じないまま過ごし、会社も順調に伸び、不自由のない生活が続いている。

 ケガをしても通常の者よりもだいぶん早く治癒していく。病院の先生にも驚かれる程の回復力だった。

 10年経って、ようやく確信する事ができた。

「私はあの時に『不老不死』になったんだ」

 不思議な青年から不老不死の命を貰ったのだ。

 この先ずっと、権力と地位を欲しいままにやっていくことができる。

 そう思っていた。

 皆、私を羨んでひれ伏すだろう、と。

 ――しかし、現実は違った。

 10年経っても容姿的にも何も変わらない彼を、皆が不気味がってきた。

 会合に出ても同年代の者は隠居を始め会わなくなり、新参者がコソコソと話を始める。

『不老不死の命を手に入れたとか言ってるらしい』
『とうとうボケ出したんじゃないのか?』
『高齢のくせに無理して、自分を認めさす為に言いふらしてるだけだろ』
『ああはなりたくないね』

 家や会社に戻るといい歳をしてまだ若社長と呼ばれている息子が皮肉気に話し掛ける。

『お父さんもいい加減、全権を私に譲ったらどうですか?』
『あなたの暴言のせいで、私の信用まで揺らいでいくんですよ』

 40過ぎの息子は彼を邪魔者扱いにしてきた。

『あなたが上で好き放題している時に、私は一人で会社の社員の心をまとめ上げたんです。もう、誰もあなたの言うことを聞きませんよ』

 不正取引の証拠もきっちりと息子が握り、表へ出ないように管理していたのも総て息子だった。