「……すみませんでした……っ」



 顔を上げると誰もいなかった。


 静かなオフィスに残されて、ぽつんと佇むわたし。
 誰も、優しい言葉などかけてくれない。


 そりゃ、そうか。


 失敗ばかりで成長もない奴のことなんて、本当なら辞めさせたいはず。
 今回のことで、もしかしたら……。



「しっかりしろ、歩美!」



 わたしは椅子に座って帰宅準備を始める。
 最近バタバタしていて乱れたままのデスク周りを少し整理。



「なんか、本当に辞めるみたいだな」



 自分のやっていることが、まるで最後の日みたいで手を止めて立ち上がる。


 勢いよく立ち上がったせいで、鞄が落ちて中身が散乱してしまった。