「歩美!!」
「……え」
エレベーターを降りて、会社から一歩外に出ると、いきなり呼ばれた。
聞き慣れた声。しかも大声。周りにいた人たちが振り返って見てる。
オフィス街の通り。
わたしと同じように仕事帰りの人も、家族で歩く人も、恋人と駅に向かう人も、みんなが注目する。
「歩美!!」
また呼ばれて戸惑う。
まだお昼前。晴斗先輩は、いつもだったら家でごろごろしているはずだ。
でも、わたしのプレゼントした紺色のストールを巻いているのは、紛れもなく晴斗先輩。
呼吸する度に上下する肩。走ってきたみたいで、髪は乱れてるし、呼吸も早い。
わたしは立ち止まったまま、動けなかった。



