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まだ早い時間だったけれど、すでに数人のクラスメートたちが登校してきていた。


みんなバラバラに座り、音楽を聞いたり本を読んだりしていて、教室内はとても静かだ。


けれどあたしと寛太が教室へ入って来ると、みんな一旦は顔を上げた。


そして一様に泣きそうな顔を浮かべ、また自分の世界へと戻って行った。


ここにいる生徒たちもみんなあたしと同じだ。


家にいることも嫌で、学校へ来ても現実を見たくなくて、そんな子たちが早くに集まってきてしまったようだ。


「どうする? 先生に話を聞いてくるか?」


机に鞄を置いた後、寛太がそう声をかけて来た。


「ううん……」


早く何かの情報を仕入れたいという気持ちはあった。


けれど、人より情報を多く持っていることで辛くなることもあるだろう。


「そっか」


寛太は小さく返事をして、またあたしの頭を撫でたのだった。