「寛太……」


「なんでこんな所で立ちどまってんだよ」


そう言い、寛太の大きな手があたしの頭を撫でた。


「だって……」


「まぁ、わかるけどな。家にいても落ち着かないし、早く学校に到着しても現実突きつけられるのがつらいしな」


寛太がそう言い、さっきまでのあたしと同じように校舎を見上げた。


みんな、同じ気持ちなんだ。


ここから先に足を踏み入れると、幸穂が死んだと認めなければならない現実が待ち受けているから、怯えているのだ。


あたしは寛太の手を握りしめた。


「でも、一緒なら大丈夫だと思う」


そう言うと、寛太は驚いたようにあたしを見て、そして笑った。


「そっか。じゃあまぁ、ここにいても仕方ないし、行くか」


「うん」


あたしはしっかりと頷いて、寛太と2人で歩き出したのだった。