沙良が死ぬ。


その恐怖におびえて混乱している。


それなのに、あたしはなにもできず、ただ呆然と立ち尽くしている。


その無力さに死にたくなった。


「沙良……。それならあたしも一緒に死ぬ」


あたしは懲りずに沙良の体を抱きしめた。


1人で抱えないでほしい。


ここにはあたしたちがいる。


もっと沢山頼ってほしい。


今まで沙良は気丈にふるまってきていた。


こうして感情を表に現したことだってなかった。


死ぬ当日になって、ようやく心を見せてくれたのだ。


「イズミ……」


沙良の体がひどく震えているから、あたしは力を込めて抱きしめた。


この震えが少しでも止まりますように。