あたしは自分の心臓がドクドクと音を立てるのを聞いていた。


この家にはなにかヒントが隠されているかもしれない。


けれど、この家の玄関を開けた瞬間の嫌な予感も、的中していたのだ。


手入れされない地蔵。


手入れされない廃墟。


それらが意味しているものは一体なんなんだろうか。


玄関を出た瞬間、見知らぬ男性が目の前に立っていた。


「ヒッ」


と悲鳴を上げ、寛太の後ろに隠れる。


「この家で何をしている」


50代くらいの男性は目を吊り上げてそう聞いて来た。


あたしたちがこの家に入る様子を見られていたのかもしれない。


「勝手に人の家に入ってすみませんでした」


寛太が深く頭を下げてそう言った。