寛太が握りしめたドアノブがゆっくりと回る。


そして赤いドアが開いた。


真っ暗な玄関が見えた瞬間、嫌な予感が胸をよぎった。


本当にこの家に入っていいのか、体全体がこの家を拒否しているように感じられた。


「鍵、開いてたな」


寛太が小さな声で呟いた。


中を覗き込んで顔を顰めている。


廃墟だから、家の中もホコリまみれだろう。


「人がいる気配はないけど、昔住んでた人の物がそのまま残されてるな」


玄関をくまなく確認してから、博樹が言った。


靴でもあったのかもしれない。


「ねぇ、本当にここに泊まるの?」


沙良が自分の両手で自分の体を抱きしめながらそう言った。


あたしと同じように嫌な予感がしているのかもしれない。