中には生まれたばかりの赤ん坊を抱っこしている女性までいる。


熱さで泣き出す赤ちゃんと、周囲の人も含めてみんなであやしている。


昼間は小さかった音楽も、今では大音量で流されている。


あの、イケニエの為に作られた悲しい歌だ。


こんな華やかな場所では不似合いな歌なのに、みんな気にしている様子はない。


あたしたちは出店を巡り、とりあえず腹ごしらえをした。


祭りが何時まで続くのかわからないけれど、この熱気はすぐには冷めそうにはなかった。


晩ご飯代わりのたこ焼きを食べ終えた頃、花火が打ち上げられた。


2000発の花火に歓声が上がる。


「あの花火が打ちあがってる場所って、丘の上かな?」


「そうかもしれないな。上がる場所がやけに遠いしな」


寛太が焼き鳥を食べながらそう答えた。


「あの丘の上からなら、この町のどこにいても花火を見る事ができるからだよ」


屋台のお兄さんがそう教えてくれた。