この町には学校はないけれど、仕事が早く終わるくらいなら町の子供たちも早く帰ってくるのだろう。


あたしたちは河川敷へ下りて、日陰に腰を下ろした。


どこからともなく、動画の中のあの歌が聞こえて来る。


録音されたテープが流されているのだろう。


それは何度も何度も繰り返し聞こえて来た。


「雨、降るのかな」


沙良が空を見上げてそう呟いた。


頭上には黒い雲が広がっている。


けれど少し視線を変えれば青い空も見えている。


降るとしても、通り雨で済みそうだ。


河へと視線を落としてみると、空の色がうつって黒く見えた。


それはイケニエとなった女性たちの真っ黒な感情に見えて、寒気がした。


今にも河の中から白い手が出てきそうだ。


助けて。


そう言いながらあたしの足を掴んで、引きずって行ってしまうんじゃないか。


そんな恐怖が過った。