あたしたち3人は100本のコスモスを摘みながら、他愛のない会話をした。


昨日のテレビとか、どうやって家を抜け出してきたのかとか。


呪いとは無関係な話に花を咲かせた。


ずっとここにいたいと思える景色だった。


「ここからだと町全体が見渡せるんだね」


100本のコスモスを摘み終わった時、沙良がそう言った。


丘の端に設置されている木製の手すりの向こうには、町が見えた。


小さな駅も、スーパーも、さっきまでいた図書館も見える。


駅の近くにはあの河が見えていた。


ここからでも、河の両端に立つ灰色の地蔵がよく見えた。


「早く行こう。お祭りが始まる前に」


沙良がそう言い、コスモスを握りしめた。


風が少し強くなり、雨雲が近づいている気配がしていた。