「ねぇ2人とも」


頭を悩ませていると、沙良が声をかけてきた。


沙良も本を読んでいたけれど、あまり内容は入ってきていないようだ。


「どうしたの?」


「お花を買わない? 100体分のお花を」


「あの地蔵にあげるのか?」


寛太がそう聞くと、沙良は頷いた。


「なんの意味もないかもしれないけど、イケニエを知っちゃったから、何かしてあげたい」


沙良の気持ちは理解できた。


この町へきて一番衝撃的だった光景だ。


あの地蔵の数だけあの河で死んだ女性がいるのだから。


「わかった。そうしよう」


寛太が頷き、あたしたちは図書館を後にしたのだった。