「祭り自体、この町にとって当然のことだとしたら告知する必要がないんじゃないか?」


1冊の本を手に取っていた寛太がそう言った。


あたしたちの街にだって毎年必ず行われている祭りはある。


けれど、毎年必ず告知されていた。


「そんなお祭りなんてあるの?」


沙良がそう聞くと、寛太が開いていた本のページを見せて来た。


そこには《100年続いた祭り》と書かれていて、白黒写真が載せられている。


その写真は沢山の人が輪になるように集まっているのがわかった。


中央に何かがあるのかもしれないが、人ごみのせいでなにがあるのかわからない。


「《イケニエ祭り》毎年、今日行われていたらしい」


本文を読んでいくと、確かに今日の日付が書かれている。


「冗談でしょ……」


沙良が青ざめてそう言った。


「このタイミングでこの町に来るなんて、なにかに導かれているみたいで気持ちが悪いな」


寛太がそう言い、体を震わせた。