「一口でいいから食べておけよ。帰ってからやっぱり食べたかったなんて言っても、もう遅いんだぞ?」


寛太の言葉に、沙良はコロッケをひと口、口に入れた。


それはとても小さなひと口だったけれど沙良の頬に赤みがさすのがわかった。


「……おいしい」


「だろ?」


寛太が白い歯をのぞかせてニッと笑う。


「ちょっと寛太、あたしにはないの?」


「はぁ? イズミはさっきから食べてるだろ。残りのコロッケは俺の分だ」


そう言って、寛太は残っていたコロッケを口の中へ放り込んだ。


「あぁ! ひどーい! あたしも食べたかったのに!!」


泉の持っているコロッケからは本当にいい香りがしている。