「クロ。」
「はい……っ!?」
振り向いたクロは目を見開く
わしの手首から少量だが血が流れているからだろう
「な、何してるんですか!?
早く止血しな……い……と……」
だんだんとクロの意識が朦朧としていくのがわかった
わしが次に話をするのはクロではない
お前だ
ゆっくりと顔を上げたクロの瞳は赤く染まっていた
『"俺"を外から呼び出すなんて勇気あるんだなぁ?』
不敵に笑うその表情は、クロであってクロでない
まるでクロの皮を被った悪魔
「てめぇ……クロじゃねぇな?」
『そういうてめぇは若頭の航だな?』
「わしらのことは知っているみたいだな。」
『あぁ。クロのことなら何でも分かる。
クロ自身が覚えていないことも全て。
俺はクロの影だからな。』
自分をクロの影だと名乗るやつ
あの1年からずっと真白とクロを探し続けていた
そして知った
あの2人は犠牲者であり、唯一の成功者だったこと
そして鍵の存在も
「クロの記憶喪失の原因はお前か?」
『なんでてめぇに教えなきゃいけないんだ?』
「てめぇ頭に向かってっ!!」
今にも飛びかかりそうな航を手で制する
中身は違くてもあれはクロの身体だ
傷つけたら意味がない
「お前だけわしらのことを知ってるのは不公平だろう?」
『……関係ないやつらだったら殺してたとこだが、クロが世話になったところだから仕方なくだ。』
「こいつ……クロの顔で言ってからいまいち実感が……」
まぁそれは分かるが
『俺はまぁ……分かりやすく言うと"存在しない人格"なんだ。
とりあえずは殺(セツ)とでも呼んでくれ。』
殺……つくづく2人はそういう運命に縛られているのだな
『俺が人格として外に出た理由は、ただ1つ。
クロが耐えられなかったからだ。
絶望という荒波に。
悲しみという深い海に。
逆に俺は、クロがこれ以上傷つくのが耐えられなかった。』
「クロの鍵は血だな?」
『あぁ。』


