この部屋は明彦さんが特別に教えてくれた所
辛かったり苦しかったりした時にはよくココに入り浸っていた
「……何で言わなかった……ッ。」
「……何を?」
「人体実験されてたことをだよッ!!
いつだって言うタイミングあっただろうが!!
なのに……ッ。」
そう言って新は顔を悔しそうに歪めた
それが俺の胸をギリギリと締めつけた
「……言えるわけない……。
普通の新と必要のない俺。
始めから……全てが違っていた……。」
「んなことねぇだろうが!!」
「あるんだよ!!この間も言っただろ!!
"お前に俺の気持ちなんか一生分からない"って!!
親に捨てられて孤児院にも見放されて、挙げ句人体実験の道具に成り下がったこの俺の気持ちが……ッ。
普通や当たり前に囲まれて生きてるお前とは違うんだよ……。」
これが俺の本当の姿だった
物語によくある可哀想だと同情される登場人物と同じ
俺は床をじっと見つめた
あの日と同じように、新がどう思うか考えたら怖かった
「初めて会った日のこと覚えてるか?
お前、あの桜を毎日見に来ててよ。
少し気になって近づいたら拒絶されるわ、変なヤツだなってずっと思ってた。」
あの時は本当に人が嫌いで1人でいたいって願ってた
「でも最初に言ったはずだ。
"お前も人だろ。"って。
お前の過去は、俺なんかじゃ想像出来ないくらい残酷だと思う。
そしてお前は、そんな残酷な世界を死にものぐるいで生き抜いてきた。
でもな、俺らに"世界の違い"なんてもんはねぇんだよ。
こうして同じように泣くし、同じ言葉も喋るし、同じ感情を持ち合わせている。
そんな俺らに違いなんて本当にあんのか?
世界の違いっつーもんが存在するのなら、俺らはこうして出会ってねぇよ……ッ。」
新は泣いていた
俺も……同じように泣いていた
「本当は……苦しかった……ッ!!
何で俺はいつも1人なんだろうってずっと思ってた。
人に裏切られるくらいなら何も信じなければいい。
1人になると、そんなことばかり考える……。
実験なんてどうでも良かった。
でも……新に出会って変わった。
これが"普通"なんだって。
友達と何気ない時間をしょうもないことを喋りながら過ごしていくあの時間が……。
でも俺には未来がなかった。
新と同じように過ごす未来が、どうしても見えなかった。
自分を閉じ込める壁が……今更邪魔になる日がくるなんて思ってもみなかった……。」


