消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇
 

「おじゃましまーす」
「ただいま」


 家に入ると、待ち構えていたように、お母さんが出てきて嬉しそうに出迎えている。

 倖子ちゃんは、手土産のクッキーをお母さんに渡して、私の部屋までやってきた。


「じゃあ、ごゆっくり」


 笑顔でお母さんが部屋のドアを閉め、階段を下りていく足音が遠ざかっていく。


「この親にこの娘ありって感じ。さすが、お母さんもいい人だねー」


 倖子ちゃんは、そう言うと、大きな紙袋を床に置いた。私もその隣に倖子ちゃんのもう一つの紙袋を置く。


 自分の部屋に、学校の友達がいる。それがなんだか不思議な光景に思えた。

 いつもの自分の部屋なのに、全然違う場所みたい。


「さっそくだけど雫、持ってる服見せて?」

 
 倖子ちゃんに言われて頷き、どう思われるかなと少し緊張しながら、クローゼットの扉を開ける。

 倖子ちゃんは、ありがと、と言って私の隣までやってきた。


「ん……これだけ?」


 訊かれて頷くと、やっぱりかー、と自分の紙袋を漁りだす倖子ちゃん。

 そこから、水玉模様のセーターが顔を出す。セーターの次にも、スカート、ワンピース、またセーター。


 どうしたらいいのかわからなくて、次々と床に置かれていく洋服達を立ったまま眺める。

 もう一つの紙袋からも何枚かの服が出てきて、全部出し終わった倖子ちゃんは、ふうっと小さく息を吐いた。


「雫は服持ってないんだろうなぁって思ってさ。あたしの貸すよ」


「え、」


 でも、と続けようとした言葉を遮って、「遠慮は禁止」と見透かしたように言われてしまった。


「んじゃ、あたしがコーデしてあげるから、とりあえず全部着てみな」