大きく、心臓が揺れる。

 きっと、私が、待っていてほしいと言ってしまったから、待っていたはずの友達を先に帰して、ずっと待ってくれている。

 お礼をしたかったのに、逆に迷惑をかけてしまった。


 それなのに、私の胸は、さっきから、高揚したように音をたてている。

 鎮まれ、と胸に手を当てながら、小走りで颯見くんの前まで駆けた。


「あ、えっと、颯見くん、友達を待ってたのに……ごめんなさい」


 緊張しているからなのか、鼓動がうるさい。


「いいよ。教室までなんて、すぐそこだし」


 颯見くんは、くしゃりと笑った。

 少しだけ、無言の時間が流れる。


 お礼を言おうと、口を開いて、でもまたすぐに閉じた。

 図々しいんじゃないか。お礼なんて。こんなものまで渡して、迷惑に思われたら、どうしよう。

 だけど、友達を先に帰してまで待たせてしまったのに、お礼しないままなのも、迷惑になってしまう。