「哀咲、」


 また、春風が爽やかに通っていく。


「寺泉たちと仲良くなれたんだな」


 くしゃり、と笑う颯見くんの顔は本当に優しくて、自然と顔がほころんだ。


 こうなれたのは、颯見くんのおかげだ。

 伝えようとしたとき、土壇場で思い出されたのは、颯見くんの言葉だった。

 それに、たぶん、大西さん達に昨日の帰り言ってくれたのは、颯見くん。


 颯見くんにお礼を言おうと、口を開きかけると、また、カランカランとお店のドアが開いた。


「颯見、次はカラオケ行こうぜ」
「嵐にも俺の激ウマなサザエさん聴かせてやる」


 中からぞろぞろと制服を着た男子が出てくる。

 目の前にいた颯見くんが、その男子たちに囲まれて、一気に賑やかになったお店の出入り口前。

 その場に関係もない、面識もない私は、どうすればいいかわからず俯いた。