体調不良でもないはずなのに、動悸がおかしくて頭がクラクラする。



「ね、哀咲さんはどう思う?」



不意に、朝羽くんに、今までの話の続きのように話しかけられた。



視線を朝羽くんに向けると、朝羽くんは少しだけ眉を寄せている。



「寺泉さんが、鈴葉を見かけるたび鈴葉に嫌味言ってるの知ってる?」



朝羽くんの発した言葉を追って、驚いて首を横に振った。



寺泉さんが鈴葉ちゃんに嫌味?
どうしてだろう。



「僕は心配で寺泉さんに言い返そうとするんだけど、鈴葉は寺泉さんのこと庇うんだ。いっつもだよ」


「鈴葉が寺泉を庇うなら、何も気にしない方がいいんじゃねーの?」



口を挟んだ颯見くんにわざとらしく一瞬視線を送って、「ほらね」と私に何かの同意を求める朝羽くん。



「嵐はこう言うけど、いざとなった時は、いっつも嵐が良いとこ取りして鈴葉のヒーローになるんだよ……」


「え、そんなんじゃねーよ」


「……そんなんだよ」



朝羽くんの瞳が、少し切ない色を含ませた。



なんだかわからない私は、ただそれを見つめることしかできない。



わからない。わからないけど、朝羽くんは、颯見くんが鈴葉ちゃんのヒーローになるのが嫌なのかな。



どうしてなんだろう。



だいたい、寺泉さんが鈴葉ちゃんに嫌味を言うって本当なのかな。



鈴葉ちゃんは、明るくて優しくて可愛くて、みんなに好かれているから、鈴葉ちゃんに嫌味を言うような人がいるなんて信じられないなぁ。