食べ終わると一緒に片付けをした。
 片付けと言ってもドレスとスーツだったから「簡単にして明日にしよう」ということになったけど。

 それからソファの方に移動する。
 隣に座った紗良を抱きしめるのは少しだけ我慢して用意していた物を差し出した。

「え……これって。」

 可愛くリボンをつけた鍵。

 ずっと渡さないままお客様として来ていた紗良に。
 どんな高価なものよりも、ずっとあげたかったもの。

「合鍵を持ってもいいよってことですか?」

 嬉しそうな紗良にこちらも嬉しいけど、若干の相違があって訂正する。

「一緒に住まないかってこと。」

「!!!」

 紗良は目を丸くして、鍵を持つ手が握りしめられたのが分かった。

「嫌な思い出を蘇らせそうで迷ったんだよ。
 指輪と、鍵と。
 指輪は重いかなって思って。」

「重いとは、重量的に?
 そんなすごいの頂けません。」

「気持ち的に。
 紗良が俺の婚約者になってって意味の。」

「そ、そ、そういうことはサラッと言わないでください。」

「そう?」

 たぶん緊張でおかしくなっているんだと思う。
 半分プロポーズみたいなことを言っちゃうなんて。
 本音がこぼれたんだよとは言わないけど。

「やっぱり私のプレゼントは渡しにくいです。」

「どうして?なんでも嬉しいよ。」

 紗良が出しにくそうに出した包みを開けると暖かそうなマフラーだった。

「いつもいつも私に上着を貸してくれる松田さんには暖かいものがいいと思ったんです。
 あ、いえ。爽助さんには。」

「ありがとう。嬉しいよ。
 かけていい?」

「もちろん。」

 自分に巻いて、それから紗良にも巻いた。

「こうしたら2人で暖かいよ。」

 コツンと当たる頭と頭。
 すぐ横を向けば紗良がいて……。

「紗良……好きだよ。」

 腕に抱きついた紗良の「爽助さん……」と呟いた声が胸を締め付けた。

「キス……してもいい?」

 甘く甘く囁いて紗良の頬に優しく触れる。
 伏せられたまつ毛が小さく震えているのが愛おしくて、ゆっくりと紗良の唇に自分の唇を触れさせた。

 離した唇に小さく吐息がかかる。
 紗良がすごく近く感じて愛おしい。
 もう一度だけ重ね合せると、抱きしめて頭にもキスをした。

 しがみついた紗良が「だいすきです」とたどたどしく言った言葉は箍を外させるには十分で。
 だけれど、大切な大切な紗良だから……。

 ちょっとだけ妬いちゃうんだよね。

「ねぇ。変なこと聞いていいかな。」

 頭をくっつけて甘い声を出す。
 紗良、俺も大好きだよって伝わるように。

「変なことって……。」

「あんまり色っぽくないこと。
 ………色っぽいことの方が良かった?」

 頭を振る紗良にフフッと笑って口を開いた。