仕事は落ち着いていて、土日は普通に休めるようになった。
 お陰で毎週のように紗良とデートした。
 映画を見たり、買い物に行ってみたり。

 会社でもあと数週間は紗良の隣でいられる。

 土日の両方とも空いている時はマンションにお泊まりもする。
 言い出したら聞かないところがある紗良が必ずソファで寝て、俺はベッドで寝た。

 亘に言わせると信じられないくらい清く正しいお付き合いをしていた。

 何も、したくないわけじゃない。
 俺だってさ。男のわけだしね。



 年末に向けてイベントは盛り沢山だ。
 街は日に日に華やかになって、浮き足立っているように思える。

「冬って寒いのは苦手だけど、イルミネーションが綺麗ですしウキウキすることが多いですよね。」

 紗良が俺を見上げて微笑む。
 この近い距離が当たり前になりつつあった。

 頬にかかる髪を指で払うと「ん……何かついてました?」と言って見上げたまま目を瞬かせる。
 その姿が無防備で、もうちょっと警戒してくれよって注意したくなる。

 少し体を屈めれば、顔が触れ合うくらいの距離。
 無自覚なところが…ね……こっちの身にもなって欲しいよ。

「そういえばマスターがさ。
 クリスマスパーティーを店でやってもいいって。
 亘が張り切ってるよ。」

「麗華さん……お二人は……。
 あれから気になっていたんですけど、聞く機会を逃してて。」

 紗良らしいな。そう思って微笑む。

「亘と付き合うことになったよ。
 なんだかんだあったみたいだけど。」

 自分の為だったとはいえ、亘にもあんなにお膳立てしてやったんだ。
 それなのになかなか付き合わなくてちょっと笑えてしまったくらい。

「そうですか。良かったです。」

「亘は俺と同じ大学だったし。
 ずっと一緒でさ。」

「本当に一緒だったんですね。
 なんでモテなかったんですかね。」

「モテなかったわけじゃない……かな。
 誰かといい感じになってもたぶん最終的には麗華が思い浮かぶんだよ。
 無意識にね。」

「麗華さんが?
 そっか。麗華さんが思い浮かんじゃったら無理ですよね。」

「で、麗華も同じ。」

「え?亘さんが思い浮かぶんですか?」

「そう。だから2人はまぁそういう面では似た者同士で………。
 もういいじゃないか。他の奴の話は。
 クリスマスは平気?空いてる?」