目を開けると自分の家ではないけれど、見たことあるような場所………。
 ここ、松田さんの寝室!!!

 ベッドには紗良以外にはいなくて、松田さんはどうしたんだろう……と起きてみて分かった。
 ソファに大きな体が横たわっていた。

 ちゃんと私をベッドで寝かせてくれるなんて、やっぱり松田さんは紳士的だ。

 テーブルには昨日かけて見せられた眼鏡。
 眼鏡をかけたって、かっこよくてドキドキしたなんて言えなかった。

「ん……紗良…………。」

 寝ぼけた声が聞こえてドキッとしても、その後の言葉は続かない。
 静かに回り込んでみると、松田さんはまだ寝ていた。
 窮屈そうな寝顔が申し訳ない。

 そんなことより……。
 何、あの寝言。

 赤くなる顔を両手で覆ってから、起こさないようにそっと荷物を集める。

 昨日は寝ちゃったみたいだなぁ。
 松田さんといて知らぬ間に寝ちゃうなんて、案外私って神経図太いのかも。

 気づかれないうちに帰ろうと思っていたら鞄が何かに引っかかって……。
 確認すると鞄の紐を松田さんが握ってた。

 寝ぼけて握っちゃったわけ?
 もー!

 ソファの脇に立ち膝をついて、鞄の紐の救出に取り掛かった。
 なんだか複雑に絡んでいて、そっとそっと起こさないように注意して………。
 あぁ!もう!無理!!!



 お風呂に入って、化粧を落とさずに寝ちゃった肌のケアをする。
 完璧な松田さんにこの顔は見せられない……。

 そう思っていたら電話が鳴った。

「どうして起こしてくれなかったんだよ。」

 ふてくされた声に思わず笑ってしまう。

「お風呂に入って化粧を落としたかったですし……。」

「帰らないように鞄を持って寝たのに。
 鞄の中身だけ持って帰るとか普通する?」

 あれはわざとだったんだ。
 なんだか松田さんが可愛くてますます笑えてしまった。

「笑わないでよ。怒ってるんだけど?」

「ふふっ。ごめんなさい?」

「うん。そう。
 早く来てよ。今日は予定あるの?」

「そういうわけじゃ。」

「じゃ映画を見ようよ。
 昨日、DVDじゃ誰かさんは寝ちゃったからさ。
 俺もシャワー浴びたら迎えに行く。」

 電話は切れて、私が早く行くのか松田さんが迎えに来るのか……。
 そこまで思って、ふふっと笑う。

 松田さんのどこが完璧なんだろう。
 拗ねたり怒ったりもする。
 そういうところが好きって言ったら驚くかな。がっかりするかもね。