力が抜ける言葉。
 じゃ俺は毎日誰に愛を囁いていたんだよ。

 おもむろに携帯を出した紗良が何か操作している。

 携帯から何か音が聞こえた。
 音っていうか、これ……。

「紗良?会いたいな。
 写真の紗良は癒されるけど見飽きたんだ。
 本物の紗良に会いたいよ。
 会って抱きしめたい。」

 流された留守電に顔から全部が熱くなる。

「なんの嫌がらせ?」

「だって………。」

 しばらくの沈黙。
 それから紗良が思わぬことを口にした。

「目の前で言ってもらわないと分からないです。」

 それを今ここで?
 久しぶりに会った上に留守電を聞かされて………。
 もうなんだっていいけどさ。

 手を握るとビクッと紗良は肩を揺らした。
 そういえば紗良に触れるのも久しぶりで気持ちが高まっていく。

 思わず抱きしめると腕の中の紗良が愛おしくて自然に声は甘くなっていった。

「紗良。好きだよ。
 信じてくれるまで何度だって言う。
 だから俺のこと好きになって。」

「……はい。」

「…………え?」

 しばらくの沈黙。
 え?今、なんて言った?

 状況が飲み込めない俺の腕の中から小さな声がした。

「私も松田さんのこと好きみたい……。」

 急いで紗良を体から離して目を合わせた。
 紗良は恥ずかしそうに目をそらす。

「ねぇ。今のもう一回言って。」

 紗良は頑なに首を横に振る。
 俺だって、俺の方こそ目を見て言ってくれなきゃ分からないよ。

 だけれど首を横に振りながら赤い顔をさせる紗良をもう一度抱きしめた。

「最初から誘うつもりだったんだ。
 今日こそはDVD見ようね。」

 誘おうと思ってた。
 指切りはしてなかったけどね。
 紗良と一緒にいたいんだ。