紗良はいいとも嫌だとも言わなかったけど、片付けをしてから紗良に「これはどう?」とDVDのパッケージを見せた。

「ダメです!松田さんの家にあるのじゃ松田さんは楽しめないですよね?
 だいたい松田さんが結末を知ってるのなんて………。」

「じゃ借りに行く?
 DVD借りに行くくらいなら平気だよ。」

「何言ってるんですか。
 1日寝込んでた人が。」

「じゃどうするの。
 紗良が出てくの禁止だからね。」

「どうしてそうなるんですか。
 とにかく!!」

 そう言った紗良が俺の手を引いてソファに座らせた。
 そして肩にかけていたタオルを持って頭を乾かし始めた。

「濡れたままなんてダメですよ。
 ドライヤーはないんですか?」

「大丈夫だよ。すぐ乾く。
 それより紗良もここに来て。」

 ソファの隣を指しても紗良は来てくれない。

「乾かさないならいきません。」

 こんなに頑固だったかなと苦笑して、ソファから立ち上がるとドライヤーを持って来て元の場所に座った。
 コンセントをさした紗良がドライヤー片手に頭を乾かしてくれる。

 その手が気持ちよくて、それにご飯も食べてお腹いっぱいで、うとうとして、いつの間にか眠ってしまった。

 DVDを一緒に観たいし、ここで寝たら帰っちゃうんじゃ……と思うのに睡魔には抗えなかった。

 何よりこんなに心地よい眠さは久しぶりだった。




 目が覚めると目の前には紗良がいて一緒にソファで寝ていた。
 体には寝室の布団がかぶせられている。

 紗良を抱きしめて寝ていて、どうしてこうなっているのかは思い出せないけれど幸せを感じた。

 スリーピングカンパニーのコンセプト。

『人間は人生の3分の1を寝ている。
 つまり起きている時間をいかにポテンシャル高くいられるかは寝具にかかっている。』

 新しくコンセプトに掲げたい。
 寝具より何より心地よい眠りは大切な人のぬくもりだって。

 もう一度抱きしめ直して時計を確認する。
 もう3時をさしていて、ずいぶん寝ちゃったなぁと夢見心地でまた目を閉じた。


「松田さん。起きて。松田さん。」

 紗良の声に目を覚ますと、紗良がソファのすみにはまって動けなくなっていた。

「どうしてそうなってるの?」

「笑ってないで助けてください。」

「そうだった。
 爽助って呼んだらね。敬語もなしで。」

「……爽助さん。助けて!」

 もう少しこのままにしておきたかったけど、可哀想かなとも思って助けてあげた。

 紗良を助け出すとお腹がグーッと鳴った。

「ふふっ。本当に元気になったみたい。」

「参ったな。
 かっこ悪いところばかり見せて。」

「そんなことないですよ。」

 本当に?

 だけど、それは今は聞かないでおこう。
 ちゃんと聞くから。また後で。