松田さんは仕事が出来て、笑顔で厳しいことを言う人だとは思っていた。
私には笑顔すらない無茶ぶりだったけど。
なんとか切り抜けれたみたいでホッと息をつく。
「お疲れ。」
冷たい物が頬に触れて心臓が飛び跳ねた。
前に飛び跳ねたのが戻ったかも……。
笑っている松田さんが手にコーヒーを持っていた。
「あ、ありがとうございます。」
会議でのこと、文句を言いたいけどそれが口から出て来ない。
松田さんからしたら全くのダメ社員だとがっかりしていそうで恥の上塗りになるくらいなら黙っていたい。
「急に振ったのに、いい意見だったよ。」
「え!本当ですか!?良かった〜。」
お世辞でも嬉しい。
笑顔で「ダメダメだね」って言いかねない怖さがあるから。
仕事に厳しいのを知っている。
だからこそみんなに尊敬されてるんだよね。
「無茶ぶりのお詫びに食事でも奢らせてよ。」
なんでまたそうなるの………。
私を誘ってなんの意味が………。
練習なんて必要ない上級者なのに。
だいたいいくらでも練習に付き合ってくれそうな人もいる。
それともからかいたいだけなのかなぁ。
からかうから私がうってつけと言われるのなら少しは理解できる。
自分で言っていて落ち込みそうだけど。
「もしまた先輩に何か言われたら助けるよ。
騎士の役目だろ?」
ナイト……。騎士と言うより王子様そのものなんだけど。
秘密と言いつつ堂々と会社で食事に誘われてどうしていいのか分からない。
「ほら。友達に会わせてみたいなって。
変な奴だけどいい奴でさ。」
「変なのにいい人なんですか?」
松田さんと話すと素敵で楽しくて、ついその世界に溺れてしまいそうになる。
だけど………。
「天野さん!
経理の天野さんが呼んでるよ。」
天野さんが……。
呼ばれて松田さんとの話は中断された。
松田さんと別れて、天野さんの元に行くと困った様子で「あ、紗良ちゃんごめんね」と出迎えられた。
「新しく入った松田くん。
スリーピングカンパニーからの出張扱いだから定期の領収書がいるんだけど。」
「はい。説明して出してもらいました。
入っていませんでしたか?」
松田さんの定期。
領収書の確認をしていて私のアパートとは全くの別方向だったことに気づいた。
本当に申し訳なかったのを覚えている。
「それがねぇ。見当たらないの。
綺麗に整理して渡してくれるから無いなんておかしいと思うんだけど………。」
どうしよう。
定期代が経費で落ちなかったら大金だ。
しかもスリーピングカンパニーに届けないといけない書類。
天野さんにもスリーピングカンパニーにも、それにもちろん松田さんにも迷惑がかかる。
「急いで探してみます!」
天野さんにお辞儀をして、自席に戻ると入れ間違えそうな場所やうっかり置きそうな場所。ありとあらゆるところを探した。
それでも無かった。
どうしよう。
他の仕事もしないといけない。
その合間にも探す。
なのに見つからない。
みんなが帰っても紗良は帰れなかった。
「どうしたの?大丈夫?」
顔を上げると松田さんだった。
涙がこぼれそうで、でも泣く資格なんてないと唇を噛み締めた。
私には笑顔すらない無茶ぶりだったけど。
なんとか切り抜けれたみたいでホッと息をつく。
「お疲れ。」
冷たい物が頬に触れて心臓が飛び跳ねた。
前に飛び跳ねたのが戻ったかも……。
笑っている松田さんが手にコーヒーを持っていた。
「あ、ありがとうございます。」
会議でのこと、文句を言いたいけどそれが口から出て来ない。
松田さんからしたら全くのダメ社員だとがっかりしていそうで恥の上塗りになるくらいなら黙っていたい。
「急に振ったのに、いい意見だったよ。」
「え!本当ですか!?良かった〜。」
お世辞でも嬉しい。
笑顔で「ダメダメだね」って言いかねない怖さがあるから。
仕事に厳しいのを知っている。
だからこそみんなに尊敬されてるんだよね。
「無茶ぶりのお詫びに食事でも奢らせてよ。」
なんでまたそうなるの………。
私を誘ってなんの意味が………。
練習なんて必要ない上級者なのに。
だいたいいくらでも練習に付き合ってくれそうな人もいる。
それともからかいたいだけなのかなぁ。
からかうから私がうってつけと言われるのなら少しは理解できる。
自分で言っていて落ち込みそうだけど。
「もしまた先輩に何か言われたら助けるよ。
騎士の役目だろ?」
ナイト……。騎士と言うより王子様そのものなんだけど。
秘密と言いつつ堂々と会社で食事に誘われてどうしていいのか分からない。
「ほら。友達に会わせてみたいなって。
変な奴だけどいい奴でさ。」
「変なのにいい人なんですか?」
松田さんと話すと素敵で楽しくて、ついその世界に溺れてしまいそうになる。
だけど………。
「天野さん!
経理の天野さんが呼んでるよ。」
天野さんが……。
呼ばれて松田さんとの話は中断された。
松田さんと別れて、天野さんの元に行くと困った様子で「あ、紗良ちゃんごめんね」と出迎えられた。
「新しく入った松田くん。
スリーピングカンパニーからの出張扱いだから定期の領収書がいるんだけど。」
「はい。説明して出してもらいました。
入っていませんでしたか?」
松田さんの定期。
領収書の確認をしていて私のアパートとは全くの別方向だったことに気づいた。
本当に申し訳なかったのを覚えている。
「それがねぇ。見当たらないの。
綺麗に整理して渡してくれるから無いなんておかしいと思うんだけど………。」
どうしよう。
定期代が経費で落ちなかったら大金だ。
しかもスリーピングカンパニーに届けないといけない書類。
天野さんにもスリーピングカンパニーにも、それにもちろん松田さんにも迷惑がかかる。
「急いで探してみます!」
天野さんにお辞儀をして、自席に戻ると入れ間違えそうな場所やうっかり置きそうな場所。ありとあらゆるところを探した。
それでも無かった。
どうしよう。
他の仕事もしないといけない。
その合間にも探す。
なのに見つからない。
みんなが帰っても紗良は帰れなかった。
「どうしたの?大丈夫?」
顔を上げると松田さんだった。
涙がこぼれそうで、でも泣く資格なんてないと唇を噛み締めた。