夢乃くんになにかあったとするならば思い当たる出来事はひとつしかない。


「あの夢乃くん。……コンビニの前で会った男の子って……」

すると夢乃くんが明らかにイヤそうな顔をして、仏頂面で私のことを見た。


「音弥がなに?」

それが下の名前なのか名字なのかは分からないけど、向こうは『夢乃』って呼んでたし、ふたりでどこかに行ってしまったからきっと親しい間柄のはず。


「お友達ですか?」

「は?全っ然!」

夢乃くんらしくない乱暴な口調で否定されてしまった。


「アイツとは同中で腐れ縁みたいな感じだよ。だから友達じゃない」

いつも歩くペースを合わせてくれる夢乃くんが今日は早歩き。


「不機嫌の理由はその方が原因ですか?音弥さん?音弥くんは……」

「ねえ、なんで瑠花が音弥のことを気にするの?」

教室に着く寸前で夢乃くんは足を止める。


急にモジモジとし始める私。気にしているわけじゃない。ただ、ただ……。


「……夢乃くんは気づかないんですか?」

「なにが?」

周りをキョロキョロと見渡して私は小声で夢乃くんに耳打ち。


「だって音弥くん、右京さまにそっくりじゃないですか……!」

「は!?」