暫く歩くと築40年の二階建てのアパートが見えてきた。私の家はここの202号室。
鉄筋コンクリートの階段をのぼってカギを開けると、タイミングよく隣の家の杉原さんが出てきた。
「あら、瑠花ちゃん」
杉原さんは60代で夫と二人暮らし。
いつもお世話になってて美味しい煮物を届けてくれたりするんだけど……。
杉原さんの視線はすぐに私ではなく夢乃くんへ。
気まずさを通り越して身体が硬直する私。
「こんにちは。瑠花さんと同じ学校に通っている夢乃です」
夢乃くんはここでも神対応を見せて、すぐに杉原さんの心を掴んでしまった。
「もしかして瑠花ちゃんの彼氏!?」
「違……」と否定しようとする私を無視して夢乃くんが割り込んできた。
「はは、どうでしょうね」
ニコリと天使の顔をして、夢乃くんは絶対にこの状況を楽しんでいる。
「まさか瑠花ちゃんにこんな素敵な人がいるなんて知らなかったわ。お母さんには内緒にしとくからね!」
「え、いや……」
「ふふ、ごゆっくり」
杉原さんはそう言って軽い足取りで階段を下りていった。



