「か、返してください」
「んーダメ」
「ほ、本当に見えないんです。だから……っ」
立ち上がった瞬間にバランスを崩して椅子につまずいた。掴まる場所も分からずに目を瞑ると大きな手の感触が身体に伝わってくる。
「はい」と眼鏡をかけられて顔をあげると、私は何故か夢乃くんの胸の中にいた。
またクラクラとするいい匂い。
「ごめんね。そんなに目が悪いなんて知らなかった」
眼鏡越しの夢乃くんはやけにクリアに見えて、こんなに綺麗な顔だっただろうか。
「もう大丈夫ですから離してください」
なんで男の子はこんなに力強いのかな。
ドキドキとまた不整脈が強くなる。
変だな。私が好きなのは右京さまで乙ゲー以外の恋愛なんて興味がなかったはずなのに。
「ねえ、罰ゲーム思いついた」
夢乃くんがまた悪い顔になってる。
「な、なんですか?」
おそるおそる聞いてみた。
「俺、瑠花の家に遊びにいきたい」
「い……家?」
「そ、家」
ああ、私は完全に夢乃くんに振り回されている。



