「うーん。でもそう思うこと自体偉いっていうか俺からしてみれば瑠花と他の女子たちはやっぱり違うけどね」

そう言って夢乃くんはあるものを私に差し出す。それは下駄箱になかった私の上履き。


「実は登校中に花壇の植木に投げ捨てられてるのを見つけてさ。だから急いで昇降口に向かったらあんなことになってたからビックリした。良かったよ。瑠花にケガとかがなくて」

夢乃くんは「ここに座って」と近くの椅子を指さした。


言われるがまま座ると夢乃くんは片膝をついて私の足に上履きを履かせてくれた。

それはまるで本当の王子様のようで、これはちょっと反則かも……。


「改めて瑠花を彼女にして良かったって思ったよ」

ニコリと可愛い顔。


「……私が彼女でいいんですか?」

夢乃くんの苦悩も分かったし、夢乃くんへの見方も変わってきた。だから……。


「うん。だって瑠花は俺を好きにならないでしょ?」

あれ、なんか今モヤッとしたのは気のせい?


「な、なりませんよ!私は右京さま一筋ですから!」

「はは、そうだよね。三次元に興味ないもんね」

キスをしといて、王子様のようなことをしといて、私にドキドキさせといてこんなことを言う夢乃くんは本物の悪魔かもしれない……。