向かったのは教室ではなく音楽室。
廊下に響き渡るのは女の子たちの悲鳴にも似た絶叫で、今ものすごいことが起きてしまったような気がする。
私はまだ頭が真っ白なままで、残っているのは柔らかかった夢乃くんの感触だけ。
まだ授業がはじまっていない音楽室にはもちろん誰もいなくて、扉を開けるとシーンと静まり返っていた。
「瑠花」
ドキッとする夢乃くんの瞳。そして……。
「マジでごめんなさい!!」
鋭い視線で女の子たちを見ていた夢乃くんはどこにもいなくて、今はむしろ床に頭が付くぐらい私に謝っている。
「俺の都合で巻き込んじゃったことと、あとさっきのキスも」
やっぱりアレは夢ではなかったらしい。
そう思ったら余計に心臓がうるさくて、今さら身体の力が抜けてしまった。
「え、る、瑠花?」
床にしゃがみこんでしまった私の手は小刻みに震えていた。それを見た夢乃くんは申し訳なさそうに眉を下げて、また私に謝る。
「本当にごめん。イヤだったよね」
あれ、私はキスがイヤだったから震えてるの?
それともあの雰囲気に圧倒されてしまったから?
たぶん後者の気持ちのほうが強い。女の子たちの視線を一斉に浴びて罵倒されて、キスをされたことよりそっちのほうがずっと怖かったから。
「乱暴にしちゃってごめんね」
「え、ら、乱暴なんかじゃなかった……ですよ」
うまくフォローするつもりが、全然言葉が出てこない。



